層というのが森林の決定的な特徴の一つで、下生え、下層植生、林冠、うっそうとしげる薄暗い熱帯林の最上層から最大樹高のエマージェント(超高木)まで、森林は層を成しています。
多層的アグロフォレストリー(森林農法)は、この自然な構造からヒントを得て、高い木の上層と1層以上の作物の層からなる下層を混成したものです。
多層的アグロフォレストリーが栽培しようとしているものとして、マカダミアとココナッツ、ブラックペッパーとカルダモン、パイナップルとバナナ、コーヒーとカカオ、ゴムと木材といった有用な素材などの例があります。
また、環境面の利点として、多層的システムは侵食や洪水を防ぎ、地下水を涵養し痩せた土地や土壌を再生し、生息地や分断された生態系を結ぶ回廊を提供することで、植物多様性を支え、大量の炭素を吸収して蓄えます。
多層的アグロフォレストリーの1ヘクタールは植林や森林再生に匹敵する炭素隔離速度を達成できます。
そこに食糧生産という利点も加わります。
現在世界には1億ヘクタール近い多層的アグロフォレストリーがあります。
カカオは約800万ヘクタール、コーヒーは約600万ヘクタールの日陰で栽培されています。
短期収穫のために多くの農家が直射日光栽培に移行してしまっていますが、直射日光(サングロウン)栽培のコーヒー農場は、急速に土壌資源を消耗させるモノカルチャー(単一栽培)です。
多層農法はサングロウンよりも2〜3倍寿命が長く、何百年でも持続可能です。
さらに、より自然な害虫駆除、施肥、水分吸収の方法が採用され、お金の節約になり農薬も少なく済みます。
よって、シェイドグロウンのコーヒーやカカオは質が高く、高値で売れる可能性があります。
その他の利点として、急斜面ややせた耕地などでも栽培可能です。
薪を取る場合にも、自然林への負担を軽くできます。 アグロフォレストリー1ヘクタールあたり12.5〜50ヘクタールの森林破壊を防げます。
このように明確な強みがあるのに、一般的な農業カテゴリーとひとまとめにされているこが多く、注目を受けていません。
そこには、認識と理解の問題以外にも、複雑なシステムを確立するためのコストや、リターンまでの時間などの課題も絡んでいます。
多層的アグロフォレストリーは湿度の高い気候を必要としますが、可能な場所ならばかなり高いインパクトを期待でき、一度確立されてしまえばかなりの採算が取れます。
炭素隔離速度が速く、栽培システムのエネルギー効率の高さは世界でも群を抜いています。
0.02カロリーのエネルギーで1カロリーの食料を生産すると言われています。
小さい区画での生産が最大化するとともに、人口密度の高い地域に住む小規模自営農業にとっては理想的な農法になります。
資金の壁を克服し、市場的刺激と生態系サービスに対価を支払うことで、人間と気候のために多層的アグロフォレストリーの恩恵を受けることができるようになるでしょう。
2050年までの成果ランキング28位
CO2削減 9.28ギガトン
正味コスト 2.87兆円
正味節約額 75.95兆円